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OMURA’S THEORY

オームラズセオリー

これは富士工業二代目会長大村隆一が、小口径・背高ガイドの考案とともに1966年に発表した遠投用ガイドのセッティング理論です。

当時の<スピニングリール&ナイロンライン>という組み合せの普及にともなう投竿用ガイドの大口径化に一石を投じた考え方であり、のちのニューガイドコンセプトの原点がここにあります。

ここでは、大村の著作からその要旨を紹介します。


オームラズセオリーと小口径・背高ガイドが生まれるまで

オームラズセオリーと小口径背高ガイドが生まれるまで小口径・背高ガイドは、今でこそ当たり前のように広く認められていますが、大口径ガイドが常識であった時代、このガイドはたいへん特異なものでした。

そもそもこのガイドが生まれるきっかけは、スポーツキャスティングの全国大会出場にそなえて筆者が猛練習していた頃にさかのぼります。 当時は海外の資料でも大口径がいいということで70、100、 150といろいろな大きさを試してみましたが、どうも糸切れが多く、特に糸がヨレていると一発で切れてしまうことに悩まされていました。 そこでリング径を小さくしたりもしてみましたが、 結果はさらに悪い状態でした。

そんな時、たまたま仲間が使っていた竿のバットガイドが取れてしまったので、 その竿を借り、バットガイドが取れたまま投げてみました。 ちょうどバットガイドによる抵抗が大きすぎることを気にしていた矢先のことだったからです。すると飛距離はほとんど変わらないし、糸切れもまったく起こりませんでした。

その時のバットガイドは16だったのですが、ときどき糸が竿に巻きついてしまうため、背を高くしてみると、さらに素晴らしい好結果が得られました。 ちなみに筆者はこの第1回大会で137mという当時としては好記録で優勝を飾りました。

以上のことを整理してみますと、つぎのようになります。

従来理論によるガイド設定法
~CONE OF FLYGHT THEORY~

この欧米からきた理論は、「ナイロン糸はキャスト時、スプールを底辺として円すい形を描くため、糸にかかるガイド抵抗を減らすには、ガイドの口径をその円すい形より大きくすればよい」というもので、従来スピニングロッドの場合、この方法でガイドの位置と大きさを割り出していましたが、しだいに実践的考慮が少ないことが分かり、遠投釣りの技術が進歩した現在、この理論に基づく竿の設計はあまり見かけません。

実際この理論にこだわると、ガイドは必要以上に大きくなり、かえってラインスラップ(糸が竿を叩く) や風などの影響を受けやすくなるために飛距離が伸びず、糸切れなども引き起こし、特に雨天時には様々なトラブルが頻発します。

新理論によるガイド設定法
~OMURA’S THEORY~

筆者による新理論は、スピニングリールから繰り出される時に生ずるナイロン糸の遠心力とガイドの関係に基づくもので、一種の遠心力セオリーと言えるものです。そしてこの遠心力は、スプールの近くでは大きく、スプールから遠ざかると急速に小さくなる、という考えにおいて特徴づけられます。

言いかえれば、旧理論がガイドの大きさのみを重視しているのに対し、新理論はガイドの大小よりも、その位置を重視している点に大きな違いがあります。

したがってこの理論に基づくならば、 バットガイドの位置をスプールから遠ざけることにより、小口径であっても少ない抵抗で糸をスムーズに送り出すことができ、逆にバットガイドをリールに近づけようとすると、途方もなく大きなガイドが必要になるはずです。

つまり遠心力の弱まる位置に付ければ大口径にする必要はなく、さらに小口径にしたぶん背高にすれば、 ナイロン糸特有のラインスラップの問題を解決することができるわけです。

新理論発見までの道のり

テスト①
コーンオブフライトセオリーの実際

スピニングリールから繰り出されるナイロン糸は、スプールを底辺として円すい形を描くため、糸にかかるガイド抵抗を減らすには、ガイドの口径をその円すい形よりも大きくすればよい、と言われていました。

事実、この理論に基づくガイド設定は、それ以前の小口径ガイド設定に比べてはるかに優れた結果を出しました。

テスト②
バットガイドをどんどん大きくする

さらにバットガイド (第5ガイド) を50から100まで大きくしてテストすると、大きいほどよい、という結果が出ました。

テスト③
無限に拡大されたバットガイド

さらにバットガイドを外してみました。これでバットガイドの口径は無限に拡大されたことになり、糸の出がスムーズになり、ときどき起こった糸切れの問題を解消することができ、さらに飛距離を伸ばすことができました。

テスト④
新事実の発見~オームラズセオリーの誕生~

バットガイドを外すことにより、いままでの第4ガイドがバットガイドになったわけです。さらにこの位置に大小のガイドを取り付けて次々にテストしてみると、飛距離はガイドの大小に左右されませんでした。

つまり問題はバットガイドの大きさより、その取り付け位置にあるという新事実に気づいたわけです。

したがってバットガイドは、リールから繰り出される糸の遠心力が最も弱まった所に取り付けるのが理想であると考えます。

写真に見る糸の違い

この写真は、1/1,000秒の高速カメラがとらえたガイドと糸の出方の関係を比較したものですが、双方の特徴をよく表しています。

大口径ガイドと糸の出方

糸の振幅が大きいため、糸が常に竿を叩くことによって抵抗が大きくなり、飛距離が伸びず、糸切れも多い。

小口径・背高ガイドと糸の出方

糸の振幅が小さいため、バットガイドを通過した糸がまっすぐになることによって抵抗が少なくなり、飛距離が伸びる。また背高のため、糸が竿を叩きにくい。

つまりこのバットガイドは、糸の振幅を変える「チョークガイド」とも呼べる。

ガイドの位置について

ガイドの取り付け位置

厳密にガイドの位置と数を決めるには、胴調子・先調子など、それぞれの竿のしなり具合に合わせて竿の反発力が充分に発揮できるように考慮しなければならず、また各自の体力・身長・投法・オモリの重さ・使用リール等によっても取り付け位置は変わります。

特にバットガイドの位置については、「投げてみなければわからない」ものであり、机上の計算だけでその位置を求めるには、あまりに条件が複雑すぎるため、時間をかけてテストを繰り返す必要があります。

バットガイドの位置

スピニングリールから繰り出されるナイロン糸に対するガイド抵抗の最たる要素は、糸がスプールから出る時に起こる遠心力であり、その遠心力の強さは、スプールを出たところで最も強く、しだいに弱くなります。

先に述べたように、バットガイドは、リールから繰り出される糸の遠心力が最も弱まった所に取り付けるのが理想であり、その位置は糸の太さ、スピード等に比例して違ってきます。スピニングリールから繰り出されたナイロン糸の遠心力は、糸が太いほど大きくなります。かといってバットガイドの位置をことさら遠く、大きくすることはお奨めできません。

バットガイドの位置があまりに遠くなりすぎると、 竿の持つ力を充分に活かせなくなるからです (バットガイドを手前に移動した場合は竿が強く、逆に穂先のほうに移動すれば竿はしなる)。バットガイドのリングの大きさも、ナイロン糸の太さによって選択する必要がありますが、あまりに大きく背高のガイドを使用すれば、竿は重くなり、風の影響を受けやすくなります。

ですので、糸が太いほどリールより遠く、また、キャスティングパワーが大きいほどリールから遠くを念頭に、しかも竿にキズをつけたり糸切れを起こさない最も良い位置を探すため、アルミテープや繊維入りテープ等でガイドを仮り止めし、実際に投げて位置を決めてください。