
2018.9.28
篭定釣具店(かごさだつりぐてん)
東名高速道路浜松インターを下り、国道1号線を走って行くと浜松まつりの凧上げ合戦で有名な「中田島砂丘」の看板が見えて来る。
中田島砂丘は、遠州大砂丘の一部となり、冬には群馬名物の赤城おろしと同じく「遠州のからっ風」と言われる強い北西風が吹くことで有名だ。
そんな中田島砂丘から浜松市街地に向け車を15分ほど走らせると今回の目的地にたどり着く。
そう、今回のFUJITACKLEPLUS+ショップインタビューは、静岡県浜松市にある「篭定釣具店(かごさだつりぐてん)」が取材先。
篭定釣具店は、JR浜松駅南口からほど近い立地に関わらず、まわりは昔ながらの町並みがひろがり、静かな住宅地に店を構えている。
駐車場に車を停めさせていただき、篭定釣具店に入ろうとすると「キスの投げ釣り相談室」というPOPが目に入ってきた。
そうなのだ、篭定釣具店は「キス釣りに特化した投げ釣り専門店」なのだ。
釣具店の入口に「相談室」というなんとも粋なPOPを見ながら、店内に入ると篭定釣具店店主である寺田弘孝さんがいつもの笑顔で出迎えてくれた。
伺った時間は10時過ぎ、篭定釣具店の開店時間は13時からとなるが「お客様がお見えになるとインタビューが中断してしまうので…」と寺田さんはインタビューの進行にも配慮してくれ、3時間前から店を開けて待っていてくれたのだ。
取材協力のご挨拶をさせていただき、今回のショップインタビューがはじまる。
さっそく、篭定釣具店の歴史について伺う。
「この店は、竹篭職人だった父親である『寺田定夫(さだお)』が、1960年に創業した店です。よく質問される店名の『篭定』についてですが『篭職人の定夫』の頭文字1字づつから名付けています」と寺田さんは店名の由来を教えてくれた。
浜松市と言えば、日本を代表する“ものづくりの街”。
その土壌をつくったのは、この地に伝わる遠州弁でいう「やらまいか精神」(あれこれ考え悩むよりもまず行動してみよう)によるものと言われている。
竹篭職人から釣具店経営への転身は相当な覚悟が必要だったと思うが、これも浜松市民の気質による進取の精神なのだろう。
その後も寺田さんは、父親がはじめた篭定釣具店について話しを続けてくれた。
「もともと釣り好きがこうじてはじめた釣具店でしたが、ここ浜松市周辺には投げ釣りが盛んな中田島砂丘を代表とする遠州灘が広がり、鮎釣りで有名な天竜川と海や川に加え、多種多様な魚種が生息する汽水湖の浜名湖があり、篭定釣具店は随分と繁盛しました。しかし、創業から16年たった1976年に父親の定夫が病に倒れてしまったのです」と寺田さん大学3年生の時の出来事を静かに話してくれた。
篭定釣具店店主、寺田家の大黒柱に起きた突然の出来事、自身は学生の身となるが、寺田さんは東京の大学に通いながら、母親である「寺田一枝さん」を必死に支え、大学卒業とともに「篭定釣具店二代目」になることを決意する。
若き店主となった寺田さんは、父親時代からの常連のお客様(篭定会メンバー200名)に支えられながら、篭定釣具店をさらに繁盛させた。
寺田さんが二代目店主となってから約15年「投げ釣り」「浜名湖の釣り」「沖の船釣り」「鮎釣り」「渓流釣り」「ルアー・フライ」「生エサ」に加え、「アウトドアグッズ」の販売まで手掛けるようになり、忙しい毎日を送ることになる。
そんな釣具全般の扱いの中に「ロッドビルディング」もあり、中田島砂丘を含む遠州灘独特の置き竿の釣りに特化した投げ竿の製作も手掛けていくようになったという。
1976年に篭定釣具店を引き継ぐことになった寺田さん、志半ばで病に倒れた父親の意思を守りながら、篭定釣具店、その店主である寺田弘孝のファンを増やしていく。
ここで寺田さんが40年以上守り続けてきた篭定釣具店、その店に集うお客様への思いを語ってくれた。
「釣具店の商売は、あくまでも趣味の世界の話しです。日々の仕事に疲れた体と心を自然の中で魚釣りという手段でリフレッシュしていただく。その裏方、サポート役として釣具店が存在すると認識しています。釣りがより快適に、より楽しくなるような釣具をお客様に提供できればと思っています。また、篭定釣具店は『キスの投げ釣り専門店』です。
釣具、情報、疑問、質問などキスの投げ釣りに関することなら、釣り人そしてお客様に真摯に寄り添うことで信頼関係が生まれ『篭定釣具店なら何でも解決してくれる、そして間違いない』と仰っていただけるとこれまでやってきました」と寺田さんは大切に守ってきたことを話してくれた。
父親が病に倒れるという突然の出来事を乗り越え、大学卒業と同時に篭定釣具店二代目になる決意は、相当な覚悟が必要だったと想像がつく。
簡単に語れない長い年月を寺田さんは、いつもの穏やかな笑顔で話して下さったが、寺田さんの目の奥には若くして父親の意思を引き継ぐ決意をした時の「強い気持ち」が見えたような気がした。
ここまでは、篭定釣具店の歴史について話していただいたが、篭定釣具店がもっとも得意とされる「投げ竿のロッドビルディング」について寺田さんに質問してみる。
「うちが本格的にキスの投げ竿のロッドビルディングをはじめたのは1998年頃だったと思います。『親父譲りの職人気質』『自分が売るものに責任を持ちたい』というバカ正直(あえてそう言う)な性格から、ライントラブルを減少させるためのガイドシステムの追究に没頭しました。
毎日、ガイドに詳しいスペシャリストの方を中心に寺田さんや篭定釣具店に集う釣り仲間とともにガイドシステムを考え、釣り場に出掛けては実証するを繰り返し『誰が使っても』ライントラブルを減少させる術を探していました。
今でも覚えていますが2000年4月に『ローライダーガイドシステム』をFUJIが発表した時は『革命が起きた!』と思いましたよ」とFUJIとの関係性についても触れて下さった。
寺田さんと話しをしていると「お客様への感謝」をいつも感じる。
篭定釣具店二代目となった時に支えてくれたお客様はもちろん、40年以上お客様と真摯に向き合い、篭定釣具店だから出来るサービス、特許を取得した「篭定遠投スプール」や実用新案等の100アイテムを超える篭定オリジナル商品をお客様に提供することで恩返ししてきたのだと思う。
また、店内には常連のお客様が各地の大会で勝ち得た優勝トロフィーやカップ、賞状が展示されている。
釣具店がお客様を称え、それにお客様が応えるという昨今忘れかけている釣具店とお客様との良好な関係も篭定釣具店では垣間見ることができる。
これも寺田さんのお客様への真摯な対応、お客様が真に求める商品の提供を真面目にしてきたからなのだろう。
「キスの投げ釣り専門店」と聞くと敷居の高いお店と感じてしまう方もいるかもしれませんが大丈夫です。「キスの投げ釣り相談室」にいる寺田さんがどんな質問でも親切・丁寧に応えてくれます。
また、遠方でお店に伺えない方もご安心、浜松ホームページコンテストで最優秀賞を受賞した「篭定オンラインショップ」には相談窓口はもちろん、寺田さんがとことんこだわった「篭定オリジナル商品」が豊富に掲載されています。
「投げ釣り情報満載」の篭定釣具店ホームページもぜひ覗いてみて下さい。
http://www.kagosada.com/ (篭定釣具店 ホームページ)
・住所 〒432-8032 静岡県浜松市中区上浅田1丁目11-19
・TEL 053-454-4026
・FAX 053-454-4026
・営業時間 13:00~19:00
・定休日 火曜日・水曜日
(メモ)
ものづくりの街、浜松市にある「篭定釣具店」は、お客様への真摯な対応とお客様が真に求めるオンリーワン商品を提供し続ける「キスの投げ釣り専門店」です。
また、遠州のからっ風を物ともせず、遠くへ仕掛けを絡まさず飛ばすための「ガイドシステム」にこだわる店主がいます。